前回のおさらい
前回の記事では、
「重要度」と「緊急度」のマトリクスから、
下記のお話をしました。
・業務の優先度を「重要度」と「緊急度」から決める。
・優先度の低い業務は「無くす」か「減らす」必要がある。
ECRS(イクルス)とは?
今回は業務を「無くす」、「減らす」といった
業務改善をどのように進めていくべきか、
その鉄則である「ECRS(イクルス)」について紹介します。
業務改善をするにあたり、よくあるパターンとして、
「自動化できないか」、「ITで解決できないか」という意見が
真っ先に挙がることがあります。
しかし、業務改善を行うときに、
最初に意識すべきことは
「ECRS(イクルス)の法則」における次の2点です。
・「ECRS」ECRSによる改善の効果は
E(排除)>C(結合)>R(入替え)>S(簡素化)である。
・「ECRS」の順で業務改善を進めると
改善に要する労力が最小限になる。
E(排除)→C(結合)→R(入替え)→S(簡素化)
すなわち、改善を行う順序を
E→C→R→Sで行えば
最短ルートで最大限の効果が
期待できる。 ということです。
ECRSのそれぞれのアルファベットの
意味は以下の通りです。
・Eliminate:排除
廃止できる仕事やルールはあるか
・Combine:結合
結合してまとめられる仕事、成果物はあるか
・Rearrange:交換
人、モノ、方法を変えることで効率化できるか
・Simplify:簡素化
複雑な業務を誰でも簡単にできるようにする。
ECRSの重要性や改善の方法を
分かり易く説いている書籍です。
ECRSの具体例
・Eliminate:排除
廃止できる仕事やルールはあるか
→この報告書、昔から作っているけど
誰も使っていないよね。
⇒だったら無くしてしまおう!
→このチェックリストは何も確認せずに、
ただ〇をつけているだけだよね。
⇒だったら無くしてしまおう!
・Combine:結合
結合してまとめられる仕事、成果物はあるか
→AさんとBさんがそれぞれ別々の方法で
同じ数字を集めているな。(大企業でありがち)
⇒どちらかが数値を集めて共有すればいいのではないか。
→スマートメーターで自動収集しているデータなのに、
現場の数値を確認しに行っているよね。
⇒自動収集だけに集約しよう。
→この報告書とその報告書、内容がダブっているよね。
⇒両方を兼ねるフォーマットをつくり、
1種類のフォーマットにまとめられるかな。
・Rearrange:交換
人、モノ、方法(やり方・タイミング)を
変えることで効率化できるか
→Bさんが集計業務に苦戦しているな。
⇒集計業務はAさんが得意だから、
AさんとBさんの一部の業務を
入れ替えよう。
→工具と作業場が離れていて、
取りに行くのに手間がかかっているな。
⇒工具を作業場の近くに配置しなおして、
効率化できないかな。
→社員が少なくて月末は報告書作成と
棚卸で業務がひっ迫している。
⇒資料作成や棚卸のタイミングを
変えてピークをずらすことはできるかな。
⇒棚卸を外注できるかな。
→○○のメーターの確認って
毎日じゃなくても差し支えないよね。
⇒月1回の確認に頻度を変えてみよう。
・Simplify:簡素化
複雑な業務を誰でも簡単にできるようにする。
⇒いつも行う計算だから、エクセルで
自動計算できる表計算シートを作ろう。
⇒マニュアルを作って誰でも同じレベルで
仕事をできるようにしよう。
→備品の発注でカタログ検索や
見積もり取得に時間がかかっているな。
⇒いつも発注するものは金額、品番、発注先を
リスト化して早見表を作ろう。
⇒機械の運転、調整、数値確認を
ITで自動化できないかな。
⇒伝票の作成をマクロやRPAで
自動作成できないかな。
ECRSを意識しないと どうなるか
繰り返しになりますが、改善を行う順序は
E→C→R→Sで行うことが効果的であると
言われています。
もし、「自動化」や「IT/AI活用」による改善、
すなわちSimplifyに該当する項目を
先に行うと、どうなるでしょうか。
「自動化」や「IT/AI活用」といった
Simplifyによる改善は、非常に難易度が高いです。
「自動化」や「IT/AI活用」を
真っ先に行ってしまうと、
Eliminate:排除で無くすことができた業務や、
Combine:結合で減らすことができた業務まで、
自動化やIT導入を行う必要があります。
また、ITを活用しなくても
簡単なRearrange(交換)だけで
解消できた課題もあったかもしれません。
過去の記事で下記のように述べたのは、
まさにECRSの順に行う必要がある!
ということだったのです。
自動化やIT/AIのツールを批判しているのではなく、
適材適所を考えたり、導入するタイミングを
見極めたりする必要がある、ということが
言いたいのです。
(私はむしろITや自動化大好き人間です。)
ECRSの各工程については、こちらの記事をご覧ください。