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「NGな叱り方」と「効果的な叱り方」

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今回は、人材育成の注意点
「叱る」ことについて
考えていこうと思います。

業務における「叱る」

(1)なぜ、叱るのか?

なぜ、「叱る」という行動が
必要なのでしょうか。

「叱る」とは、どのような
 行為・働きかけか?

「叱ること」によって
 得られるメリットは何か?

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考えはまとまりましたか?

・部下が失敗したら叱るよね。

・同じミスをしないように
 叱っている。

「叱る」ことの本質について、
人材育成の本質から考えていきましょう。

私は、「業務における教育」を
以下のように定義しています。

①メンバーが
 「成果物」を得るための
 「望ましい行動」を
 行えるようになる/増やす。

②メンバーが
 「成果物」を得る過程で
 望ましくない行動」を
 減らす/行わないようにする。

この考えは、こちらの記事で
紹介しています。

「叱る」という行動は
人材育成の定義のうち、
②を成すための行動だと考えています。

②メンバーが
 「成果物」を得る過程で
 望ましくない行動」を
 減らす/行わないようにする。

「褒める」「叱る」については
行動の強化・弱化に着目してまとめると、
以下のように表現できます。

「褒める」
=「望ましい行動」に対して
 「良い結果となった」と
 感じさせ、行動を強化する。

「叱る」
=「望ましくない行動」に対して
 「悪い結果となった」と
 感じさせ、行動を弱化する。

人材育成とは、
強化したい行動を褒めて、
弱化したい行動を叱ること。
とも言えますね。

(2)叱る効果の落とし穴

「叱る」という行為。
誰でも経験があります。

しかし、この「叱る」には
多くのデメリットがあり、
多くの方がその落とし穴に
落ちています。

ここからは、「叱る」ことのデメリットについて
考えていきましょう。

デメリット①叱る効果の「中毒性」!

「叱る」ことで、部下や後輩の
「望ましくない行動」を抑制する。

このこと自体は、教育に必要なことだと
私は考えます。

しかし、「叱る」という行為の効果には
次の2点の特徴に注意が必要です。

叱ることによる行動の弱化は
「即効性」が有る。

→叱ることで、部下・後輩は、
 即座にその行動を止めます。

叱ることで、相手が「反省」する
(…ように見える。)

→叱ることで、相手はその行動を止めて
 「すみませんでした」と一言お詫び。

この、「即効性」と「反省」を
目の当たりにすると、どうしても
次のような感情が芽生えがちです。

上司

叱れば部下は思い通りの
行動をしてくれる!

しかし、この考え方はとても危険です。

上記のように(無意識に)考えてしまうと
「叱る」=「効果があるやり方」となり、

・叱る頻度が増える。
・叱り方が過激になる。
・叱る以外の方法で指導をできなくなる等、
「叱る」ことがエスカレートしていきます。

また、「叱る」ことのデメリットは、
叱った本人だけではなく、
叱られた相手にも多くのデメリットを
与えることになります。

引き続き、「叱る」のデメリットを
考えていきましょう。

デメリット②叱る効果は長続きしない

皆さんは、部下・後輩を叱ったとき、
その効果が長続きしなかった…という経験が
あるのではないでしょうか?

この前も注意したのに
同じミスをしているな。

この子、何度注意しても
歩きスマホを止めないな…

なぜ、叱っても効果が長続きしないの
でしょうか。
それには、大きく2つの理由があります。

この2つの理由によって
「叱っても効果が続かない」ということが
起きます。

そして、「叱ること」に中毒性を
覚えてしまった人の場合、
さらに「叱る」がエスカレートします。

【叱るが長続きしない理由①】
人の習慣はそもそも変えるのに
大きなパワーが必要である。

→人間には「ホメオスタシス(恒常性)」
 という、生きるための本能があります。

生体が外的および内的環境の変化を
受けても、生理状態などを常に一定
範囲内に調整し、恒常性を保つこと。
また、その能力。
神経やホルモンの働きによる。
米国の生理学者キャノンが提唱。

デジタル大辞泉(小学館)

何か行動を変えようとしても
神経やホルモンの働きにより、
変わることが阻害されます。

一度や二度、叱られたくらいでは、
人間の習慣を変えることは難しいです。

「習慣」は、それだけで記事が5つ増えるほど
悪い習慣を無くすということは難しく、
ただ単に叱るだけでは抑制が難しいです。

叱ることにより習慣を変えるのであれば、
「ホメオスタシスに勝るメリット」を
示す必要が有ります。

また、
「褒める/叱るの効果的なバランス」
研究結果があるので紹介したいと
思います。(後述)

【叱るが長続きしない理由②】
 叱られた人は叱られて
 「否定された」と感じて
 反抗心を持つ。

叱る=否定と捉えられるデメリットは
次の章で説明します。

デメリット③叱る=否定と捉えられる。

叱るとき、相手に掛ける言葉次第では、
叱られた本人が

「責められた、否定された」


と感じてしまうことがあります。

人は否定されると、自分を保とうと
本能的に反発します。

全ての部下・後輩が『素直な人』とは
限りません。

叱られて「反発している状態」で、
相手の言うことを聞き入れられる才能を
持つ人は一部である
と考えましょう。

また、叱られた相手が「否定され続けた」と
感じてしまうと、モチベーションが低下して

生産性が下がってしまいます。

さらに、この状態が続くと精神的に
参ってしまい、「退職」してしまったり、
鬱などの「精神病」に至る場合があります。

叱るときには、「相手自身を否定しない」
ことが重要
です。
(これについては後述します。)

デメリット④叱ることで、良い行動も弱化される

これの典型的な例が「報連相」です。

上司に何かを報告・連絡・相談した際、
その内容をひどく叱られた場合、
次からは報告・連絡・相談が心理的に
しにくくなると思います。

また、上司に挨拶をした際に、
上司がイライラしていて、
自分の挨拶にいちゃもんを付ける「叱り」を
されたら、部下・後輩は上司との距離を
置くようになってしまいます。

「効果的な叱り方」ができていないと
前述の報連相や挨拶といった
本来「望ましい行動」である
コミュニケーションも弱化されることに
なります。

デメリット⑤叱ると周囲のメンバーにも悪い影響を与える

他のメンバーが叱られているのを見ると、
なんとなく気が重くなり、
作業効率が低下したり、
嫌な気分になりますよね。

叱ることによって周囲に与える影響も
考慮したうえで「叱る」という方法を
活用しなければなりません。

(3)NGな叱り方

ここからは、「叱るデメリット」を
最小限にするために、
「NGな叱り方」について紹介します。

そもそも、行動の強化/弱化という
視点で考えると

人材育成とは、
強化したい行動を褒めて、
弱化したい行動を叱ること。

つまり、褒める、叱る行為の対象は
「行動」でなければなりません。

NGな叱り方①叱る対象が「望ましくない行動」ではない。

もし、「叱る」対象が
「望ましくない行動」ではなかった場合、
どのようになってしまうでしょうか。

「行動が対象になっていない
 叱り方(=主語が無い叱り方)」は、
叱られた側が自動的に

私は●●が、できないんだ。

と、叱ることで否定された対象を
「望ましくない行動」ではなく、
「叱られた本人自身」であると
補完してしまい、
人格が否定されているように
感じることがあります。

よくあるNGな叱り方は、
ミスに繋がった行動を
叱るのではなく、
相手の性格や性質を
叱ってしまうことです。

(ミスが多い、忘れやすい等)

左:NGな叱り方、右:行動を対象にした叱り方

NGな叱り方②叱るタイミングが即座でない。

望ましくない行動を弱化させるためには、
相手に「どの行動を弱化しなければ
ならないのか」が伝わる叱り方をする必要が
あります。

もし、叱るタイミングが行動を行った
数日後であった場合、

なんで、今この話を
ぶり返されているのだろう?

と、感じてしまいます。

これでは、
「ただの八つ当たり」と
思われても仕方ありません。

褒めるときと同様、叱るときも
タイミングは「行動の直後」が
望ましいです。

NGな叱り方③何を叱られているかわからない

叱る言葉にも注意が必要です。
良くありがちなミスはこちら。

「よくわからない例え話」を挟んで
 何に対して叱っているのか伝わらない。

・部下・後輩に気を遣い、
 「曖昧な言葉」でやんわりと注意し、
 何に対して叱っているのか伝わらない。

叱るときに重要なのは、
弱化したい行動を叱ること。

何が「望ましくない行動」かが
相手に伝わるように、
ハッキリと伝える必要が有ります。

ハッキリ言うことに抵抗がある方も
いらっしゃるとは思います。
ですが、叱る対象が「行動」に
フォーカスされていれば、
相手は「人格を否定された」と
感じにくくなります。

NGな叱り方④なぜ「望ましくない」かがわからない

習慣を変えるのはホメオスタシスが
働くので難しい。
という話で述べた通り、

叱ることにより習慣を変えるのであれば、
「ホメオスタシスに勝るメリット」を
示す必要が有ります。

その「望ましくない行動」を行うことで
どのような利益を逃すのか、
不利益が生まれるのか。
「望ましくない理由を明確にしましょう。」

(4)叱り方のポイント

叱り方のポイントですが、
ここまで読んだ方なら
なんとなくわかってきたはず!

NGの逆のことをしていけばいいのです。

「相手」ではなく、
「行動」を叱る。

叱るときに重要なのは、
弱化したい行動を叱ること。

何が「望ましくない行動」かが
相手に伝わるように、
ハッキリと伝える必要が有ります。

「行動」にフォーカスして叱ることで、
「相手の人格や性格」を否定することを
避けることもできます。

叱った行動が
「なぜ望ましくないか」を
明確にする。

人の行動や習慣を変えるには、
ホメオスタシスを超えるメリットを
示さなければなりません。

なぜ、その行動が望ましくないか。
相手が「この行動を止めなければ」と
思う様に伝えましょう。

理解度を確認する

相手が、「どの行動を叱られているのか」
「なぜ、その行動をしてはいけないのか」
これらが、きちんと理解されているか
疑問に思う場合は理解できているかを
確認することも重要です。

大切なことは、望ましくない行動について

何が「望ましくない行動」か

「その行動を止めるメリット」は何かを、
叱る対象に伝えることです。

「即座」に叱る

褒めるのも、叱るのも
早ければ早い方が効果的です。

自分も相手も記憶が鮮明なうちに
褒めたり叱ったりしましょう!

また、一度叱ったら、その行動が
再発するまでは、ぶり返さないことも
重要です。

(5)叱り方のNG/OK事例集

これまでの復習!
ここでは具体例を交えた
NG/OK集をお見せします。

おまけ:褒めると叱るのバランス

アメリカの心理学者マーシャル・ロサダが
行った実験によると、高い業績を出す
チームはメンバー同士の会話で使われる
言葉の比率が次の割合であると解りました。

ポジティブ:ネガティブ=約3:1

さらにより高い業績を達成する
チームでは、次の比率であったそうです。

ポジティブ:ネガティブ=6:1

前述にもあるように、「叱る」ことは
多くのデメリットを秘めています。

一方、褒めることには多くのメリットが
存在します。

そう考えると、この比率は納得です。
ここで、褒めると叱るの比較を
改めてまとめてみました。

行動分析学を基にした
褒め方、叱り方は
こちらの本がお勧めです。

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  • この記事を書いた人

いわたさん

【プロフィール】
Name:岩田さん
Work:JTC製造業
Like:改善!
若手の頃の苦労を共有して
日本の生産性を上げたい系ブログを
書いています。

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